霧多布湿原学術研究支援成果データベース

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管理番号67
年度2005年
研究テーマ浜中町の哺乳類相
研究者名近藤憲久
所属道東コウモリ研究会
分類哺乳類
キーワード1動物
キーワード2ほ乳類
キーワード3
キーワード4
テキスト67 平成17年度
   浜中町の哺乳類 近藤憲久
浜中町の環境は、JR花咲線を中心に2つの地域に分けることができる。すなわち、南は森林地帯と霧多布湿原、北側は酪農地帯が広がる地域である。今回は海獣類のゼニガタアザラシが加わったので1種増え7目11科37種の哺乳類が生息する (阿部ほか、1994)。哺乳類では、エゾリス以外は普通夜活動する。そのため夏の無積雪期は、夜3回調査を行い、エゾシカ7頭、キタキツネ3頭確認したのみである。3回調査のうち、コウモリを対象にカスミ網を使用し2回捕獲を行い、7種14個体捕獲した。さらに、幌戸川廃坑の冬眠調査を7回行い2種5個体にバンドを付けた。なお、春先は、バンドを嵌めず確認だけを行った。また、冬の積雪期には、足跡中心の調査を計7回行い、JR花咲線から南の貰人から立岩の海岸地帯の森林地帯および霧多布湿原を中心にした地域と北側の浜中第一小学校を通る第一地区の幹線道の酪農地帯が広がる地域に於いて調査を行った。食虫目および齧歯目は、リス科を除き過去に行った文献によった (近藤、1986)。なお、ネズミ類は痕跡調査で多数足跡があったが、種類を確認することは出来なかった。リス科では、今回の調査では、シマリスとモモンガの存在は確認できなかった。エゾリスは、積雪期の足跡調査で、林道を通過する個体が3個体あった。翼手目は、2003年に行った「浜中町コウモリ相」調査の時と種類は変わらなかった (近藤ほか、2005)。この付近はこれらのほかにヤマコウモリ (Nyctalus aviator Thomas,1911) とヒナコウモリ (Vespertilio superans Thomas,1898) がいると考えられが、今回の調査からは昨年と同じく発見されなかった。なお、今年の調査では、カスミ網の調査は2回行われ、ウサギコウモリ1個体、チチブコウモリ3個体、ヒメホオヒゲコウモリ1個体、コテングコウモリ1個体、カグヤコウモリ4個体、ホオヒゲコウモリ1個体、ドーベントンコウモリ3個体が捕獲されバンドを付けて放獣した。兎目は、エゾユキウサギ1種類のみが過去の文献および今回の調査から確認されている。なお、この種は、昨年確認されたJR花咲線北側からは確認されなかった。食肉目は、9種が確認された。ヒグマは、去年に引く続き今回も浜中町農林課に行き情報を得た。昨年までは、過去5年間 (平成12年~16年) では、JR花咲線北側で6回、南側で27回であった。今回は、JR花咲線北側で3回、南側で3回の目撃例および足跡を発見した。南側でいずれも7月に発見した親子連れは、発見場所が近いこともあり同一の個体と思われる。また、北側では、8月に1km以内で2例の目撃例および足跡を発見したが、これも多分同一個体であろう。この個体は、茶内原野の酪農地帯で養蜂業者が蜜を取るため箱を設置した所に居ついたと考えられる。この様な例は、過去に根室市川口でも見られた。蜜を取るための箱の設置とヒグマの関係は今後検討すべき課題である。しかし、嗅覚が人の1,000倍良いヒグマが蜜に釣られて酪農地帯に居座ると考えられ、蜜を取るための箱がヒグマを誘引させる要因であろうが、場合によっては他の地域から削除され有効であると考える。事前に養蜂業者と農林課との打ち合わせが必要であろう。なお、この酪農家から11.5km離れたフッポウシ第三林道 (厚岸町) で10月11日に糞を発見した。ヒグマは最大で一日に40km移動することから同一の可能性もある。ミンクは、河川に生息する動物である。湯沸岬の水源地の周りには足跡が見られた。また、幌戸川の河川付近にも複数の足跡があった。偶蹄目は、エゾシカ一種が確認されている。冬の積雪期にJR花咲線の北側 (5回)と南側 (5回) で調査を行った (2回は両方行った)。その結果、南側霧多布-厚岸道有林の針広混交林に集中して集まっているのがわかった。特に、厚岸町と浜名町の境界から藻散布にかけて集中していた。また、3月後半の夕方湿原内にも30頭以上の群れがあった。なお、昨年行った茶内-浜中間の林道は、12月に多雪であったため今年度は出来なかった。この間を調査すれば、厚岸町と浜名町の境界から藻散布と同じぐらい足跡が確認できたと思われる。しかし、いずれにしても針広混交林に集中してねぐらにしていたことは変わりない。これに対して、JR花咲線の北側および南側の広葉樹林では全部で4頭の足跡を確認しただけであった。つまり、積雪期には集中して針広混交林に集る傾向にあると考えられ、夕方から夜は海岸に出て牧草等を食べるものと考えられる (写真参照)。それに伴い、冬季間、針広混交林の中の広葉樹に樹皮剥げが目立った。鰭脚目は、幌戸川の河口に2月26日にゼニガタアザラシが死んでいるのを発見した。この付近は上陸場が沖にあり流れ着いても可笑しくはないが、道道初田牛浜中線の橋の下で死んでいた (写真参照)。
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