霧多布湿原学術研究支援成果データベース

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管理番号63
年度2005年
研究テーマ湿性植物による酪農雑排水の水質浄化
研究者名猫本健司
所属酪農学園大学
分類蓄産環境保全地域社会学
キーワード1畜産
キーワード2環境
キーワード3
キーワード4
テキスト63 平成17年度
   湿原植物による酪農雑排水の水質浄化 猫本健司
はじめに
浜中町農業協同組合(JA浜中町)では、「酪農雑排水」と呼ばれる牛乳処理室やミルキングパーラーで発生する汚水の対策を、全組合員を対象として近年中に実施する計画がある。これを受け、本業務では、湿原地帯である浜中町らしい処理方法のひとつであり、実際の酪農現場で導入しやすいシステムとして、ヨシを用いた人工湿地の造成と、人工湿地による水質浄化を検討したものである。本業務はJA浜中町ならびに酪農学園大学酪農学部家畜管理学研究室と共同で遂行した。本報告書は同研究室の高沢依公子氏の卒業論文「ヨシを用いた人工湿地の造成と酪農雑排水の浄化」から再編したものである。また、本業務の遂行にあたっては、JA浜中町の方々をはじめ、酪農学園大学干場信司教授および学生のみなさま、帯広畜産大学・麻布大学・東京農業大学非常勤講師内田泰三博士、霧多布湿原センター高井文子氏ならびに北海道農業研究センター長田隆氏に多大なご協力を頂いた。なお、本業務の一部は浜中町の霧多布湿原学術研究助成を受けて実現した。

背景と目的
水は私たちの日々の生活に切っても切り離せないものである。日本は水資源に恵まれた国であり、蛇口から出る水をそのまま飲める国は全世界を見てもそう多くはない。しかし近年、家畜排せつ物から生じた硝酸性窒素による地下水汚染が数々報告されている(例えば志賀[6])。さらに、排水にはクリプトスポリジウムや大腸菌などが含まれている場合もあり、それらの病原菌による集団感染が起こらないとも限らない。平成16年11月に「家畜排せつ物管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が適用され、牛舎周辺からの汚水流出はかなり減少してきた。しかし、酪農雑排水については、排水の基準はあるものの実質的な規則はまだない。排水は直接河川に流入、または地下浸透しており、環境汚染が懸念される。酪農雑排水には牛乳搬送用パイプライン、ミルカー、バルククーラー等の洗浄水、ミルキングパーラーピットの洗い水、廃棄乳などが含まれるが、飼養頭数やふん尿の混入の有無で、排出される排水の量、濃度にかなりの差がでる(金内[3])。ふん尿の混ざる高濃度な排水の処理方法としては、膜分離活性汚泥法、オゾン処理法、電気分解法、凝集剤の利用などの研究が進められている(例えば高橋[7])。しかし、ふん尿の混ざらない比較的低濃度な排水の処理方法はあまり研究されていない。膜分離活性汚泥法のような排水処理方法は、大掛かりな施設を必要とするため、低濃度な排水を処理するシステムとしてはコストが高く、手間がかかりすぎる(猫本[5])。低コストで行なえる排水処理方法として、植物による浄化システムの有効性も話題になってきてはいるが、あまり多くの報告はなされていない。そこで本研究では、実際の酪農現場で導入しやすい、低濃度な排水向けの処理システムとして、ヨシを用いた人工湿地の造成と、人工湿地による水質浄化の検討を目的とした。工湿地による水質浄化を検討した。
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