霧多布湿原学術研究支援成果データベース

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管理番号21
年度1998年
研究テーマ根室層群の層序と化石
研究者名成瀬 元
所属京都大学理学部
分類古生物学
キーワード1古生物
キーワード2
キーワード3
キーワード4
テキスト21 平成10年度
   根室層群の層序と化石 成瀬元
はじめに
根室層群は北海道東部及び千島弧の西端に位置する白亜紀末から古第三紀にかけての堆積物である.根室層群は釧路の北西にある白糠丘陵に分布するものと、釧路の東部から根室半島にかけてと歯舞諸島,色丹島に及ぶ地域に分布するものとの二つの地域に分かれている(Fig.1).当初,鈴木(1923)によってイノセラムス,アンモナイトが報告されたため,根室層群はすべて白亜系であると認識されていた.しかし浅野(1962)による古第三紀の有孔虫の発見によって一部が古第三系にかかるのではないかと考えられるようになり,Yoshida (1967)による古第三系の有孔虫群集の報告により,それは確実なものとなった.そのため,日本に数少ないK/T境界の存在する地層として注目されるようになった(松本,1970).一方根室層群は,その上位の石炭を含む浦幌層群のような経済的価値に乏しいため詳細な層序に関する研究はあまり行われなかった.しかし各地で地質図幅が作られるなどして次第に調査が進み,君波(1975~1983)によって広域の対比が行われ,海岸地域の層序が組み立てられた.その後,岡田ほか(1984),Okada et. al. (1987)で特に微化石層序についての研究が進み,Saito et al(1986)によって内陸部の根室層群から K/T 境界粘土層が発見された.また,Fujiwara et. al. (1990)による古地磁気層序の研究も行われている.しかしいまだに海岸地域の根室層群と内陸地域の根室層群の細かな地層対比は行われておらず,海岸地域のK/T境界の位置などの疑問についても未解決のままである.また,堆積相解析などの研究も岡田・平(1984)がわずかに触れているのみでほとんど行われたことはなく,大型化石を古生態学的に観察する詳細な研究もあまり行われてはいない.以上のように,根室層群はその地質時代が注目されてきた.しかし微化石,大型化石ともに産出がまれであるため,年代のわからない層準がいまだに残っている.そのため,できる限り時代判定に有効な化石を発見し,君波(1978)以来誰も調査していない層序区分についてももう一度見直して,根室層群の地質時代についてより詳細な考察を加えることを目的とした.また,根室層群のある露頭からは保存の良い化石を非常に多産することが吉田(1958) によって報告されている.しかし,Matsumoto and Yoshida (1979)によるGaudryceras hamanakaense の記載と Ueda(1963) によるOpishokkaidoensis の記載があるのみでその露頭から出る化石の産状などに関する報告は一切ない.そこで,その露頭について詳細に調査し,なぜそのような化石産地が形成されたかについて考察した.)
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