霧多布湿原学術研究支援成果データベース

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管理番号13
年度1996年
研究テーマ霧多布湿原の土壌溶液と河川の水質特性
研究者名谷 昌幸
所属帯広畜産大学畜産学部
分類土壌化学
キーワード1水質
キーワード2土壌
キーワード3
キーワード4
テキスト13 平成8年度
   霧多布湿原の土壌溶液と河川の水質特性 谷昌幸
はじめに
北海道には広く湿原が存在し、寒冷な気候によりその多くが泥炭地となっている。泥炭とは分解不完全な植物遺体が堆積したもので、泥炭地は泥炭の堆積している場所を意味する(阪口,1974)。北海道の泥炭地は明治開拓期、そして第二次世界大戦後に大規模に開発された。現在、北海道の全泥炭地の80%以上が農用地または都市化による開発用地として利用されている(近藤,1981)。しかし近年、ラムサール条約にみられるように自然状態で存在する泥炭地(湿原)の重要性は再認識されつつある。北海道東部は海霧の発生が多く、太平洋沿岸に釧路湿原や霧多布湿原のような泥炭地(湿原)が広がる。浜中町に位置する霧多布湿原は、その約803haが大正11年に天然記念物『霧多布泥炭地形成植物群落』に指定された。また、1993年にはラムサール条約に登録された。このような現状で湿原を保存しようとする動きとは別に、周辺地域の開発、観光地化は進んでいる。泥炭地(湿原)の存在意義や役割としては、大気中の二酸化炭素の貯蔵庫(Zdruli et al.,1995)、地下水の貯蔵・放流、洪水抑制、微気候安定性、養分保持、水質の浄化など(Dugan,1990;Duncan and Groffman,1994)が指摘されている。さらに、泥炭地には泥炭土由来の有機着色成分が溶解した水が多く存在する(丹保・堤,1982)。このような泥炭地水(泥炭土壌溶液)中には、泥炭土由来の腐植物質や溶存有機物が多量に溶存し、泥炭土内における無機物や有機物の挙動、および周辺水圏環境における水質などに大きな影響を及ぼすと考えられている。しかし、それらに関する研究はまだ少ない。そこで、本研究では北海道浜中町の霧多布湿原において、無機物の混入程度や構成植物が異なる泥炭土壌の土壌溶液、および湿原内を流れる河川の水質を測定し、(1)河川・湖沼水や泥炭土壌溶液の水質特性、(2)泥炭土壌溶液や河川水中の無機物と有機物間の相互作用、(3)泥炭土壌への無機物の混入程度や、その構成植物の相違による水質への影響などの点について調べることを目的とした。
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